話し合いで生まれる二つの成果・価値

東京メディエーションセンターがなぜ話し合ったほうが良いと考えているかというと、話し合いによって導かれる合意案よりも、話し合いによってプロセスで生まれるものの価値があると感じているからです。

例えば、夫婦の問題で、家事の分担が課題だとしましょう。 洗濯は誰が、料理が誰が、皿洗いが誰かと分担が決まることももちろん大事ですが、 どうして分担の話をしたいと思っているのかが夫婦で共有されることもとても大事だったりします。 話し合いでは「〇〇をどうするか」「こうしよう」という議題に対する答えも話し合いの目的ですし大事な成果ですが、相手を理解し、自分を理解してもらうことをしながら起きる人間関係の修復や改善ができることがとても大きな意味があります。

人間関係の修復や改善が行われると、ちょっとしたことを伝え合えたり、聞けたり、話し合うことができるようになります。 話せる関係になることこそ大事なのです。

関係が改善されるプロセス

では、話し合いでなぜ関係が改善されるのかというと、話し合いのプレセスで、相手への理解と関係の強化が生まれるからです。

メディエーターが課題の背景や希望の背景を聞いたりすることで聞かれた人に起こることは、”どうしてそう思っているんだろう?”という自分への問いが生まれます。

それを口に出して答えていくと、考えが整理されたり、自分の思いに気づいたりします。 そのプロセスは、相手に素の自分を晒すことにもなります。 相手のそのプロセスを見ることで、素直な相手の心の動きを知り、時に誤解に気づいたりもします。 そして、根底にある自分の希望が理解されることにもなります。

そのプロセスの中で起こることは

・自分の希望を伝えることができたという手応え
・相手が自分の話を聞いてくれたという事実
・相手は自分の話を受け止めてくれたという手応え です。

そして時に

・相手は自分の話を受け止め返してくれた

ということが起こります。 返してくれるものは、感謝であったり、謝罪であったりします。
その過程の中で、お互いの素の感情や希望に出会い、関係が修復されたり、関係が深まったりします。 話し合いの中では、以下のようなプロセスがよく生まれます

1 相手の問題なんだから相手がなんとかすべきと思っていた
2 相手は真剣に受け止めてくれた
3 事情を聞くと仕方ないようにも思えてきた
4 でも今の問題は解決したいので自分もできることを考えてみた
5 こういう感じで手伝いましょうかと伝えてみた
6 相手もこういうふうにしてみますと伝えてきた
7 なんかあったら話せる関係になったし、なんかその問題は気にならなくなってきた

そんな感じです。

話し合いの中で生まれること

話し合いの中で起こる大事なこととして

・当時や今の相手の事情や気持ちを知ること
・当時や今の自分の事情や気持ちを伝え、知ってもらうこと
・謝罪や感謝を伝えること
・赦しを伝えること
・深層にある自分の希望や相手との共通の課題に気がつくこと
・何か良いアイデアはないかと一緒に考えること
・そこから協力してアイデアに取り組むこと

このようなことが生まれ、人間関係が修復改善されるのです。

相手と話せる関係になった。 相手が信用できる人だと分かった。 話し合いの前後で起こる関係の変化こそ、実はこれが一番大きい話し合いの成果です。 専門家や立場のある人に和解案を提示されて受け入れるのではなく、お互いの話し合いを支援することに東京メディエーションセンターは価値を見出しています。 一緒に課題を解決する中で生まれる人間関係の修復や改善が話し合いのプロセスで生まれる実は大事な成果だと思っています。