こんにちは。理事の徳山です。今回のコラムは弁護士としての立場から、メディエーションが求められる背景などをお伝えできたらと思います。

世の中で、日々紛争は発生しています。その中には、コミュニケーションの問題に起因する紛争も少なくありません。深刻な事件としては、マンションの隣人間でのトラブルから、殺人事件に至ったものもありました。また、友情・恋愛感情が紛争に発展し、殺人や自死にまでつながった悲しい事件も後を絶ちません。

このようなトラブル、紛争に対して、私は、日々の弁護士業務において法律家として関わる一方、当センターでは、メディエーションを通じて向き合っています。では、それぞれの関わり方はどのように違うのでしょうか。

弁護士(法律家)の関わり方

①解決のためのルール

一般にトラブル・紛争というと、弁護士への相談や、裁判手続による解決を思いつくかもしれません。当然、法的な権利・義務(わかりやすく言えば、金銭や契約等に関すること)をめぐるトラブルであれば、弁護士や裁判所が関与して、法的ルールに基づいた解決方法によることがふさわしいといえます。法律で定められていたり、過去の判例・裁判例として積み上げられたりした規範(ルール)は、杓子定規と思われがちですが、多くの場合は妥当な解決を図れるように作られています。これに当てはめることで、どちらの主張が正しいかを白黒つけるのが法律による解決です。

他方で、お互いの主張に白黒つけることにより、「勝ち負け」がはっきりしてしまい、それ以降に同じ社会で共存することが難しくなる側面もあります。そうならないように、お互いが納得できる内容による「和解」で解決することも多くありますが、それでも、弁護士が間に入ったり、裁判所で対面したりするというのは、わかりやすい「対立関係」であり、かつてのような間柄に戻すのは簡単ではありません。そして、そこは、法的ルールの適用により解決するものではなく、また、弁護士や裁判所等が関与する手続もありません。

②弁護士の立ち位置

弁護士は、当事者の一方の代理人という立場で依頼を受けることになります。当然、紛争の解決を意識しながら活動を進めますが、その中でも依頼者の要望を実現することを最優先します。極端に言えば、第三者としての立場で妥当だと思われる内容だったとしても、依頼者がそれに対して「Yes」でなければ、相手方に伝えることはしません(当然、依頼者に対して説得は試みます)。このように、「代理人」という立場で活動する上で、「言いたくても言えない」ということも出てきます。

メディエーションの関わり方

①解決のためのルール

メディエーションでは、必ずしも法的な権利・義務に関わらない近隣や家族内のトラブルに向き合います。例えば、ゴミ出しのルールや子供の教育方針等については、社会でのルールがなく、法律に基づいて解決することは困難でしょう。このような問題について、例えば弁護士に依頼した場合、それは仕事として受けられないと断られるか、なかば無理くり法律上の問題として構成し、金銭や契約上の紛争として処理されることになりかねません。これでは、かえって近隣や家族間のきずなに亀裂が生じてしまいかねません。

メディエーションでは、双方の「想い」を掘り下げることで、白黒をはっきりさせるよりも、同じ社会での「共存」を強く意識した解決策を探っていきます。

②メディエーターの立ち位置

メディエーターは、双方の当事者から独立した立場で、事案に関与します。それぞれの言い分を引き出したり、中立的な言い方に換えたりすることで、お互いが「理解」することを意識しながら進めていきます。それぞれの想いを引き出したり、伝わりやすくしたりすることを意識して、一方ではなく双方に寄り添いながら、話合いを進めていきます。

事案に適した解決方法の選択

このように、法律とメディエーションとでは、ケースへの向き合い方に違いがあります。

注意していただきたいのは、どちらによる解決が正しいというわけではなく、事案に適した解決方法があるということです。当然、法的な紛争については、弁護士や裁判所によって解決が図られるべきですが、それではうまくいかない、近隣のマナー等に関する悩みごとについては、メディエーションによる解決が適しているのです。

そうは言っても、どのような方法が適切なのかは悩むところです。まずはお気軽にご相談ください!

 

【自己紹介】

徳山佳祐
弁護士・プロアクト法律事務所。当センター理事として、円滑なコミュニケーションをサポートする一方、自身も子どもへの接し方や伝え方に悩み、反省する日々です。誰もが悩みを抱えています。一緒に考えていきましょう!